(岐阜ラジオ(AM1431)の番組「岐阜医師会ラジオホームドクター」 平成18年12月21日放送)

蓄膿症とは俗語であり、本来は急性副鼻腔炎と呼びます。鼻風邪をひき、これが引き金となって鼻腔の炎症が副鼻腔まで拡がると、鼻水や鼻づまりに引き続き、頭痛、発熱、顔面痛、歯痛などの症状が出ます。これが急性副鼻腔炎です。鼻の粘膜に細菌やウイルスが感染し炎症が起こると、粘膜が腫れて、鼻腔と副鼻腔をつなぐ小さな孔(これを「自然孔」と呼びます)が閉塞し、副鼻腔にたまった膿汁が排泄されなくなりたまってしまうのです。

最近は急性副鼻腔炎にアレルギー性鼻炎を合併するケースが増えています。施設によって差はあるでしょうが、広島大学医学部耳鼻咽喉科のデータでは37~38%、私どもののクリニックでは約半数の50%の方に合併があるように感じています。

このような背景には、次のような理由があげられます。

生活習慣により、ほこり、ダニ、といったアレルギーの患者さんが増加したこと。また、現在の抗生物質は非常に優れており、鼻風邪をひいても副鼻腔炎になるまでこじれにくくなったのですが、アレルギーの方はすでに鼻や副鼻腔の粘膜が腫れており、自然孔が閉塞しやすく、こじれてしまうのです。

ですから、急性副鼻腔炎は免疫力の低下した高齢者に多く罹患するのではなく、花粉症をお持ちである働き盛りの20~40代の人たち、ほこり、ダニの通年性アレルギーの子供たちに多いのです。

細菌感染とアレルギー、原則として症状の強い方を重点的に治療していきます。普通はアレルギー性鼻炎の症状が強いことが多く、抗ヒスタミン薬の内服やステロイド点鼻薬などの薬物療法を中心にマクライド系抗生物質を併用していきます。

お薬ではなかなか治せない場合は、副鼻腔に局所麻酔した後、穿刺針を入れ、中の膿を吸出します。慢性化しないようにしっかり治しておくことと、普段からアレルギーの手当てをしておくことが重要になります。