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蓄膿症
昔のような青ばなを垂らした子供さんはあまり見かけなくなりました。これは細菌感染が主体の蓄膿症で、抗生物質が発展した現在では治療が容易になったからです。蓄膿症とは副鼻腔に炎症が生じた状態を表す俗語です。
鼻水が止まらないとお母さんは風邪が長引いているとお思いです。実際には蓄膿症の初期はそんな症状で始まります。現在の蓄膿症は、アレルギー性鼻炎に細菌感染が合併していることが多く、良くなったり悪くなったりを繰り返します。細菌を叩くだけでは完全にはよくならず引き続きアレルギーの治療が必要になります。
副鼻腔の炎症を診断するには顔のレントゲン検査をいたします。副鼻腔の粘膜はアレルギーの関与が大きいほど肥厚しています。治療には1ヶ月以上かかることもしばしばありますが子供のうちのしっかりと治しておけば、成人に持ち越すことはありません。
- 【治療方法】
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1) 抗生剤の投与
マクロライド系の抗生剤を投与します。細菌の抑制のほか粘膜の免疫力を高めたり、粘膜表面にある繊毛の運動を活発にさせる作用があります。治療に時間がかかる場合は少量長期投与といって、投薬量を半分以下にして3ヶ月をめどに飲んでもらいます。
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2) 抗アレルギー剤の投与
抗アレルギー剤の投与を併用します。また採血でアレルゲン(アレルギーの原因物質)を同定して予防していただくことも重要です。 レントゲンにて副鼻腔の病変が消失するまで行います。

▲治療前6歳男児
▲治療後2ヶ月 -
繰り返す鼻血は要注意
(岐阜ラジオ(AM1431)の番組「岐阜医師会ラジオホームドクター」 平成18年12月14日放送)
俗に鼻血と呼ばれる鼻出血はいろいろな原因で起こります。一番多いのは単純性鼻出血で全体の8割にみられるものです。これは、鼻を強くかんだり、鼻をほじって傷をつけたりなど、鼻の粘膜を刺激して起きます。鼻の入り口付近1~2cmの「キーゼルバッハ」からの出血です。ここは毛細血管が集合しており、粘膜も薄いため出血しやすいのです。
子供さんの鼻出血はほとんどがこれにあたいし、座って指で鼻をつまんで圧迫していただくと5分ほどで止まります。鼻にティッシュを詰め込むことは、傷をひろげることもあり、おすすめしません。また、鼻出血を繰り返す子供さんはアレルギー性鼻炎や蓄膿症を合併していますので要注意です。
鼻がムズムズしたり、詰まって苦しいと、どうしてもいじりますので、「鼻を治して~」というサインだと思ってください。
次に動脈性出血があります。中高年で特に高血圧の人に多くみられます。鼻腔の後ろの方にある「蝶口蓋動脈」など、太い血管が動脈硬化で血管壁がもろくなり起こります。出血は激しく、鼻からだけでなく、口からもあふれるほど大量に出ます。この場合はタクシーや救急車で一刻も早く医療機関に受診してください。私どものクリニックにも、年に何人かがタオルで真っ赤にして来られます。出血している血管を見つけ、レーザーや電気メスで焼灼します。なかにはそれでも止血せず、入院施設のある病院に行っていただくこともあります。
高齢化社会になり、近年、狭心症、心筋梗塞、脳梗塞の治療薬である「抗凝固薬」を服用されてみえる方が多くみられます。血液をサラサラにして血栓をつくらないようにする大事なお薬ですが、鼻出血は止まりにくくなります。たいてい大出血を起こす前に、予兆として、小出血を繰り返しているようです。この時点で近くの耳鼻科で止血処置を行っておけば、大変な思いをしなくてもよいケースも多くありますので、早めの受診をおすすめいたします。
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蓄膿症の原因はアレルギーが急増
(岐阜ラジオ(AM1431)の番組「岐阜医師会ラジオホームドクター」 平成18年12月21日放送)
蓄膿症とは俗語であり、本来は急性副鼻腔炎と呼びます。鼻風邪をひき、これが引き金となって鼻腔の炎症が副鼻腔まで拡がると、鼻水や鼻づまりに引き続き、頭痛、発熱、顔面痛、歯痛などの症状が出ます。これが急性副鼻腔炎です。鼻の粘膜に細菌やウイルスが感染し炎症が起こると、粘膜が腫れて、鼻腔と副鼻腔をつなぐ小さな孔(これを「自然孔」と呼びます)が閉塞し、副鼻腔にたまった膿汁が排泄されなくなりたまってしまうのです。
最近は急性副鼻腔炎にアレルギー性鼻炎を合併するケースが増えています。施設によって差はあるでしょうが、広島大学医学部耳鼻咽喉科のデータでは37~38%、私どもののクリニックでは約半数の50%の方に合併があるように感じています。
このような背景には、次のような理由があげられます。
生活習慣により、ほこり、ダニ、といったアレルギーの患者さんが増加したこと。また、現在の抗生物質は非常に優れており、鼻風邪をひいても副鼻腔炎になるまでこじれにくくなったのですが、アレルギーの方はすでに鼻や副鼻腔の粘膜が腫れており、自然孔が閉塞しやすく、こじれてしまうのです。
ですから、急性副鼻腔炎は免疫力の低下した高齢者に多く罹患するのではなく、花粉症をお持ちである働き盛りの20~40代の人たち、ほこり、ダニの通年性アレルギーの子供たちに多いのです。
細菌感染とアレルギー、原則として症状の強い方を重点的に治療していきます。普通はアレルギー性鼻炎の症状が強いことが多く、抗ヒスタミン薬の内服やステロイド点鼻薬などの薬物療法を中心にマクライド系抗生物質を併用していきます。
お薬ではなかなか治せない場合は、副鼻腔に局所麻酔した後、穿刺針を入れ、中の膿を吸出します。慢性化しないようにしっかり治しておくことと、普段からアレルギーの手当てをしておくことが重要になります。
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